<花> 花の季節にお前は生まれた。 そうは言っても、そこここで、競うように咲き誇ってるやつじゃない。 これから咲く、予感の花だ。 俺たちは忘れやすい。 一年前の春、どんな花が咲いていたか、空気はどんな暖かさだったか、冬を越すとほぼ覚えていない。 そこに一つ二つ、暗い街のあちこちに灯りをともすように色を咲かせるのが現れる。 そのうちに日差しが明るくなり、俺たちはみな、おや、と思う。 朝の冷たい空気の中、葉を落とし、細い枝を寒々と伸ばしている樹に近付くと、そこに小さな芽がたくさん付いていて、先の方にはもう、葉の色が覗いているのを発見する。 そうか、と思い、俺たちはみんな、 希望を抱く。 これから咲く花の様子を思い出す。 想いはひと息に遠くへ向かう。 支えられ、援けられ、進んでいけると思い出す。 その力強さ、清々しさは、 この季節に生まれたお前そのものだ。 お前が放つ、希望の光を、お前以外の皆が感じてる。 だからみんな、お前を好きになる。 ただお前だけが寒空にひとり、 お前自身の温かさに気付くことがない。 自分の気持ちもわかろうとしない。 ただ生き生きとして、一生懸命なだけだ。 春がいつでもそうあるように。 そんなお前を、俺は「選んだ」わけじゃない。 お前がいたからすべてが始まったんだ。 サンジ。 誕生日、おめでとう。 お、遅くなりました。。。。 |