<メグの話> え?サンジさんに恋人が? よかった!え?船の仲間?ああ、あの刀の人ですよね。 ええわかります。凄い殺気でしたから、あの時。私も少々武道を嗜みますからそれくらいは。 あの人が尋常じゃない気持ちをサンジさんに抱いていることはすぐにわかりました。 でも、そうですか。 それじゃサンジさんの方も。 そういうことですよね? 随分長く掛かったんじゃないかしら。 あの剣士さん、良く待ちましたね。 ああ…… それは本当によかった。 サンジさん、人のことにはよく気が回って優しいのに、自分のこととなると途端に分からなくなる人だから……そこがまた素敵なところなんですけど、女の目から見てもちょっと危なっかしいって言うか。 すぐ「好き」になったって思い込むけどほんとは何かその相手にしてあげたい、役に立ちたいって思ってるだけなんだと思います。 でも今度は同情なんかじゃないですね。 あの剣士さんがそんな中途半端な気持ちを受け入れる訳がないもの。 愛を知ったサンジさんは―――、また強くなるんでしょうね。 なんだかお祝いしたいような気分です! そうだわ、ケーキを焼こう。あの時サンジさんに褒めてもらったレモンケーキ。 そして……試しにお店に出してみます。もし評判がよかったらそのまま、パンと一緒に置くことにして、そのうち種類も増やして…… ああ。あの人はやっぱり魔法使いじゃないのかしら! 名前を聞いただけで、幸せになったって聞いただけで、こんなに力が沸いてきました。 ほんとに不思議。 早速これから掛かることにします。 名前は何にしようかしら。マジック?ウィザード?全く、私ったら物書きの端くれのくせにセンスがなさすぎですよね。もう、結婚式の準備がどんどん遅くなっちゃうけど、仕方ないわ。やらなきゃ! え?いえ私のです。ほんのひと月ほど前に決まったばかりなんです。 ついに? ふふ。そういうことになるかしら。 そうだわ、このこと、サンジさんに伝えてもらえますか? それでもう、サンジさんも復讐のことなんか忘れて幸せになってねって。 あ、ケーキの名前が決まりました。 《仮に奇跡と呼ぼう》 長すぎるかしら。 メグ>『嫉火(航海日誌その三)』に登場。 |