「それは……どうでしょうか」
「いけませんか。この私立海洋学園高校の輝かしい未来の為
に、私、全身全霊を傾けて考えて参りましたのですが」
「でも、生徒をそのように振り分けるというのはどうも……」
「出来のいい生徒どうしは、集めてやったほうがお互い切磋琢磨も
しやすくなるんですよ」

ワポルの、貼り付けたような笑顔はぴくりともしなかった。

「雑音に悩まされることなく勉強の効率も高まり、成績は大幅アップ! 
引いては当校の評判もぐんぐん上がること間違いなしです」

教える方も楽だしなあ。

シャンクスは微かに赤い髪を揺らした。

「出来の、よくない生徒はどうなります」
「まあ……彼らとて、周りが皆同様のレベルとなれば、学習の進度を気にする必要もなく、
あ、それにあれです、仲間意識がより一層堅固になる可能性が予想されると申しましょうか……」

クズだと認定されて一まとめにされる、その屈辱感はどうなんだ。
勉強どころじゃなくなるだろう。
進度だって、ゆっくり進むにも限度ってモンがある。

結局振り落とされる奴らのことは爪の先ほども考えてないんだな、と重ねてシャンクスは思った。

「まあ、お気持ちはわかりましたがここはもう少し様子を見て」
「ですが、ほとんどの理事の了解も取り付けてありますし!」

教頭は尚も食い下がった。


大方大規模な料亭ミーティングがすでに数回、催されているに違いない。
校長である自分は決して呼ばれることのないミーティング。
その費用が十中八九、学校の使途不明金扱いの予算から出ているだろうことを思うと、
わかってはいても少々腹の虫がうごめいた。


この学校は、裕福な家の生徒だけで成り立っているわけではない。


シャンクスは、周囲から見えないように拳を握った。
握りながら力一杯に、穏やかな笑顔を作る。


「どうです、教頭先生。もう一年待ってくれませんか。それで状況が変わらなければ、
もしくは今より悪くなるようなら、この案はまたその時改めて協議をするということで」
「それがいいようですね。第一この話題が教職員間で取り上げられるのは、今日が初めてですし」

世界史教師が、にこやかに、最高級の鈴の音の様な声で援護してくれた。
空気がわずかに固くなり、我を張り続ける人間を静かに圧迫する。

教頭と、その腹心の部下チェスは、苦虫を噛み潰したような顔で押し黙った。



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